病院長のご挨拶

六甲病院 病院長
安保 博文

 六甲病院は、急性期病棟、地域包括ケア病棟、療養病棟、緩和ケア病棟を有し、疾患の急性期、亜急性期、回復期、慢性期、終末期のすべてに対応する病院です。これにより、患者様が退院されるまでの間、院内で必要な医療とケアを提供することができます。

 当院の大きな特徴の一つは、1994年に開設された緩和ケア病棟です。緩和ケアは、一般に進行がんなどの重篤な疾患に伴う痛みを緩和することとして認識されています。しかし、緩和ケア病棟開設以来、私達が多くの患者様とそのご家族から学んだ最も大切なことは、緩和ケアの目標は痛みを和らげることだけではない、ということです。緩和ケア病棟を利用される人々の願いは本当に様々です。苦痛がないこと、適切な治療を受けられること、食事ができること、自分で身の回りのことができること、家族や親しい人と一緒にすごすこと、感謝の気持ちを伝えられること、穏やかな気持ちで人生を全うできること。こうした多様な思いを大切にし支えるために、医師・看護師に加え、薬剤師、栄養士、リハビリテーション療法士、医療相談員など多くの職種が常に話し合って課題に取り組んでいます。

 さて、このような医療のあり方は、緩和ケアに限らず、様々な病気や怪我のために病院を訪れるすべての人が望んでいるものではないでしょうか。高齢化が進む現代の日本において、教科書や医学論文に書かれた通りに医師だけで判断する医療では、患者様やご家族に安心していただくことは難しくなってきています。六甲病院では、すべての患者様に多職種で取り組み、それぞれの患者様とご家族のあり方に沿った、個別の医療とケアを提供していきたい、と考えます。

 こうした役割を十分に果たすため、今回、その拠り所となる新しい病院理念を策定しました。新しい病院理念は「多様な思いを大切にし、つながりと希望を育む病院」です。この理念を職員全員が心に刻み、地域の皆様のために日々取り組んで参りたいと考えます。どうぞよろしくお願いいたします。